最近気に入った短歌

・フライングディスクぼくらをつなぐ空 先生じゃなくていい昼休み  かばん3月号 本多忠義氏

・半音を下げて真冬は降りてくるキリンのようなさみしさにいる      同   森山緋紗氏

・かつて星は爆発し永遠に縮みゆくああそれわたし身体で知ってる     同   柳谷あゆみ氏

どれも若々しいというかみずみずしい歌ですねえ。こういう歌を作れる人が短歌界の将来を担ってほしい。いえいえ、短歌会だけではありません。政治だって教育だってみんなそう。本当の民主主義を作れる人。それはイデオロギーではなく感性が豊かであることからです。

短歌って実は説明するのが難しいというか、勿体ないんです。せっかくいい歌ができているのにそれを鑑賞するのではなく、分解してしまうような余計なことをしてしまうからです。一首目のフライングディスクというのはお分かりだと思うけど、昔はフリスビーとか言ってましたね。今では競技にもなって人気なスポーツとしても成り立っています。おそらく高校生でしょう、抜けるような青空のお昼休み、フリスビーを思いっきり飛ばして遊んでいる。そこにいて僕らを引き付け合っているのは先生ではなくって「空」。この感性が素晴らしい!

2首目の半音を下げて真冬が降りてくるってどういう意味でしょう。これは2か月前の締め切りですから、1月以前に書かれていたものであることは間違いありませんが、半音というのがよく分からない。そのよく分からない部分も含めて気持ちがわかるというから不思議な歌です。秋とは違うどんよりとした寒さですかね。そこに半音という表現がぴったりなんです。そしてキリン。このキリンのうつろな目がまた絵になる。首を上から下にスローモーションでおろして葉っぱを咀嚼しているところまで眼に映ります。

3首目。これはすごい!宇宙が始まりビッグバンが起こり、こんどは収束してゆく。散り散りになった星に周期が生まれ、一定の速度で回り出す。その宇宙のマクロ的な経験を個人の体が覚えているっていうんだから。ここまで自分自身を見つめなおすことのできる人って少ない。でも僕はわかるな。

こういう歌と出会うとホッとするんです。僕にも彼ら若い人と同じ感性があります。年寄りはだめですね。若い人に期待しましょう。ウクライナも大変なことになってるけど、今日の夕方やっていたミャンマーで自由を求めている若い人たちも何人も亡くなっています。本当は年寄りから亡くなればいいのにと思います。若い人たちが可哀そうすぎる。彼らにもっと権利と自由を。

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