当座預金を解約できなかった

僕は従業員22人もいた社長をやっていたんですが、7年ほど前に70年の歴史を閉じました。お蔭でこんな楽な生活になったのです。

とはいえ、会社が倒産したわけではありません。わずかではありますが、お金や権利なども残っていました。借金は私個人が会社に貸し付けていたお金がほとんどです。他人(銀行さんなど)からの借り入れは一切ありません。買掛金もすべ清算してお店を閉じました。

では「会社も」閉じたのかといえば、それはNOなんです。今でも名前を変えて存在します。会社の通帳も持ってるし、微々たる活動ですが、会社の収入もあります。だけど、当座預金、つまり手形や小切手で支払うことはもう一度もありません。すべて銀金振り込み、又は振り込まれる。だからこの決算期に当座預金だけでも解約してしまおう、という気持ちになったんです。毎年当座預金残高数千円なんて報告は必要ありませんからね。

ところが、今日はその小切手帳は持って行ったんですが、手形帳の方を持って行きませんでした。それでだめだったんです。手形帳は紛失したってことにすれば事は簡単だったんでしょうけど、あるってはっきり言っちゃった。だから「持ってきてください」言うことになりました。手形は危ないですからね。簡単に割り引かれてしまう。第三者の手に渡ったら何千万という金を支払う義務があるんです。手形なんて僕が社長になってから一度も発行したことがありません。三カ月後とか六か月後に支払うなんて絶対にイヤ。でも、世の中にはそういう取引が日常茶飯で、お金回りがかなり苦しい。僕は銀行借り入れがいやなので、お金が無いならやらない主義。だからこれ以上大きな設備投資をして会社をワンランク上げようなんて気持ちにはならなかったのです。

これが良い結果につながっているんだと思いますよ。新たな若い従業員を雇わなかったので、会社を彼らの生活を守るために存続させる必要がなかったんですね。お客さんからは残念がられたのはもちろんです。東京新聞さんが最後の日を記事にしたいと申し出てくれましたけど、お断りしました。そっと店を閉じる方がいい。

話が飛んじゃいましたね。手形は恐い。だから今度は手形帳も持って行くつもりです。明日はお葬式があるので来週になります。そしてゆくゆくはこの会社も閉じることになると思います。ああ、創業80年でついに消えるか。

PAGE TOP